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食べて、作って、映画観て

映画を観て食べたくなったものを食べるブログ。たまに作ったりもする。

2014年ベスト映画

1.『アナと雪の女王

数年に1本、お客さんの熱狂が渦となって劇場全体を取り囲むような映画があるのですが、女子高生やOLで埋まった初日の日劇は竜巻状態でした。「be the good girl you always have to be(いつもいい子でいなさい)」と父である王(男社会)にことあるごとに抑圧されて育ってきたエルサが、自分を押し込め押し込め…もー我慢できん!と爆発してレリゴーを歌い出す。王子様を必要としないヒロイン像の登場は、「女子力」から「ガールズパワー」への転換を象徴する出来事だったのではないでしょうか。女の子たちの熱気の中でエポックメイキングを感じることができたのは、最高の映画体験でございました。レリゴー。
 
ストーリーも職人たちが精錬して作った純度99%の結晶のようでしたね。カメラワーク、照明、キャラクターの動き、音楽ひとつひとつにちゃんと意味がある映画記号の集大成のような2時間です。

2.『アデル、ブルーは熱い色

カンヌ映画祭で史上初、監督と主演女優2人にパルムドール(最高賞)が与えられた作品。レズビアンの女性二人の恋の始まりから終わりを、ほぼ女優たちの顔や肉体のアップで描いています。それだけに、ささいな表情の変化や、しぐさなど、生身の人間が私たちに喚起させる感情が強烈に浮き彫りになる感じがあり、自分の体験と重なって刺さること刺さること。胸から血を流す覚悟がある方だけご覧ください。
 
人間は一瞬一瞬変わり続けて、相手も自分も二度と同じ瞬間に戻ることはないのだなあということを強く感じました。瑞々しい娘だったアデルの人生は灰色に変わり、単調な毎日をこなすつまらない教師になってしまう。自分が一番軽蔑していたであろう人間になり、ブルーのワンピースを着ても永遠に戻ることはない。これは死ぬことよりも残酷なのではないかと思いました。
 
あと、すっごくボロネーゼ食べたくなります。ボロネーゼ!

3.『グランド・ブダペスト・ホテル

ウェス・アンダーソン最高傑作。セットや衣装がドールハウスのように可愛く、ちょっとひねったキャラクターやこだわった画面構成が特徴的な監督さんです。ただ、だいたい世界観を見せた時点で出オチで、最後はストーリーが息切れしちゃったりするのが残念な部分がございました。今回はそんなウェスくんが驚くほど成長しております!ワクワクするミステリー要素や活劇を織り交ぜ、古き良き時代の「品格」を語るラストにはほろ苦い気持ちに。例えて言うならアート肌で自由気ままに生きてた三男坊が、いつの間にかすっかり立派になってた、という遠縁のおばちゃんの気持ち。

4.『6才のボクが、大人になるまで。』

撮影期間12年、同じ俳優が年をとりながら家族を演じるという前例のない映画です。ひとつひとつのエピソードが誰にでも起こりそうな些細なことなのが素晴らしいです。小さな瞬間を年表記せずに、なめらかに繋いでいく。例えば主人公がちょっと年上の男の子たちと空き家でお泊まり会をするのですが、そこで何も起こりません。観客としては肩すかしを食らう感じですが、私たちの記憶も同様に年のラベルなんてついていなくて、どうでもいいことを強く覚えていたり、点と点のような瞬間の集合体が人間性を作っているんではないかなあと思います。その少年の記憶を一緒に体験しながら、離婚した両親の老いも並行してちゃんと見せていく。時間の不条理を見せながら、最後は少年時代からの旅立ちを祝うような素敵な終わりかたでした。
 
あとサントラが最高です。オープニングがColdplayの「YELLOW」で、映画館の大音量でBoyhoodというタイトルにかぶさると、その時点でちょっと胸がきゅっとして泣きそうになりました。YO LA TENGO、Arcade Fireの曲を映画館で聞いて、自分のここ10年ぐらいを懐かしく思い出すところがあったり。

5.『物語る私たち』


『物語る私たち』(サラ・ポーリー監督)劇場予告編 - YouTube

映画監督・女優として活躍するサラ・ポーリーが、家族のインタビューや父親が残していた8mm映像を交えて自身の出生を明らかにしていくドキュメンタリー。家族の間で父親に似てないというのがお決まりの冗談だったサラは、実は舞台女優だった母親が愛人と作った子供。成長して自分が父親と血のつながりがないことを知ったサラは、遺伝子上の父親が誰なのか、母親の俳優仲間たちに聞きに行くことになります。ここまで書くとまるで昼顔のようですが、回想から見える彼女の母親のエネルギッシュな生き方や、ユーモアがあって愛情深い家族たちはとてもチャーミング。お父さんが「私が愛しているのはこの子だ」という一文を読み上げるシーンがあるのですが、観客としてはそこで涙腺が決壊してしまうわけです。でも、サラは監督として冷静に「パパ、もう一度よ」とダメ出しする。家族の危機を再構築して、あくまで軽やかに締めてみせるのでした。最後に誰かの目を通して「物語ること」に対する虚構を明らかにする、という仕掛けも面白い。遺伝子は違っても、彼女の物語る才能を作ったのはこの父であり、母であり、この家族なんだろうなと思います。サラ・ポーリーはまだ35歳なんですけど、若くして卓越した目を持っていて末恐ろしいですね。 

6.『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅

親子や親戚といったミクロの世界で交わされる会話のリアリティが素晴らしいです。カトリックのお母さん(ジューン・スキッブ)が毒舌で、若い頃あいつは私のブルマーの中身を狙ってただの、親戚にFワードで啖呵切ったり、ギャップがあって大変面白い。秀逸なのが、トラックを欲しがる父親に「なんでトラックなんだよ?」と息子が詰め寄る場面。老いてちょっとぼけちゃった父親(ブルース・ダーン)が「お前たちに何かを残したかった」と答えるのです。丸く、小さくなって、子供のような口調で。これが胸を打つ。中西部の人にとってトラックって開拓時代の馬のような、かっこいい男の象徴なのではないかと思います。不器用ゆえにそこから遠く離れてしまった父親のために、息子が取る行動がまた泣かせる。

7.『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

すっごい地味なんですけど、ジワジワまた観たくなる映画です。多数の映画賞をとってるこの映画に新たな賞を贈るとしたら、「キャリー・マリガンに罵倒されたいで賞」ですね。キャリー演じる友人に「お前は一生コンドーム二重に被せて絶縁体で巻いとけ!」みたいなこと言われるシーンが最高です。60年代のニューヨークを舞台に、売れないフォークシンガーのドン底1週間を描いています。友人の彼女を妊娠させ、金はない、家もない、預かった猫も見つからず踏んだり蹴ったり。人生は猫みたいに何ひとつ思い通りにいかず。それでも「死んだように生きていたくはない」と、信念を曲げられず街の片隅で生きて行く主人公の歌は、成功できなかったすべての人たちを代弁しているかのようでした。

8.『ゴーン・ガール』

この映画は何も事前情報なしで観たほうが面白いので手短に。カップルで行くと観終わった後に微妙な空気が漂うこと間違いなしですので、別れたいときだけ一緒に行きましょう。アメイジング・エイミー!

9.『ウルフ・オブ・ウォールストリート

んーん♪(どんどん)んーん♪(どんどん)

足で車のガルウィングを開けるところと、マイク食べそうなほど「Pick Up the Phone!」を絶叫しまくるところで爆笑。3時間をまったく感じさせないスピード感とエネルギー。金!セックス!ドラッグ!以上!みたいな潔さが好きです。かっこいいスコセッシが帰ってきたのが嬉しい。

10.『ビフォア・ミッドナイト

またリンクレイターさんの映画です。シリーズ三部作のラストを飾るこの映画、脚本が細かい。ロマンチックだった前2作と違い、今回は恋愛感情を失った生々しい夫婦の諍いが中心。垂れたオッパイ丸出しでiPhoneを取るジュリー・デルピーに、41歳の夫婦の現実を見ました。

欄外:【未公開作】『俺たちニュースキャスター2』

残念ながらDVDスルーだけど、こういう映画が世界を救うんですよ、まったく。プンプン。スティーブ・カレルのキレっぷりと、コメディ界のミューズ、クリステン・ウィグの不思議ちゃんコンビに笑い止まらず。豪華ゲストのカメオ出演者も含めてみんなが楽しんでる雰囲気がいい。
 
こうしてまとめると、わたしの2014年は家族愛と時間に興味を持ってたのかもなーと思いました。2015年も面白い映画に出会えますように。